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書ければ良いので

BUSHIROAD ROCK FESTIVAL 2023

BUSHIROAD ROCK FESTIVAL 2023(2023年5月27日/富士急ハイランド・コニファーフォレスト)


 

 始まりは2021年から。

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 2021年2月に開催予定だったBUSHIROAD ROCK FESTIVAL(以下、ブシロックフェスと表記する)が2年以上の時を経て、いよいよ開催されるということで行ってきた。「行ってきた」と気軽に書いているけれど、5月の筆者は『「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 最高のヒーロー』という舞台作品の東京・兵庫・東京凱旋公演に足を逐一運び、日本国民の三大義務の一つ・勤労の義務のもと舞台がない日は仕事をしているので、この時点で1ヶ月間休んでいない。

 この状態で山梨県っていうか富士山の麓で5時間のスタンディング野外ライブなんて大丈夫かしら……なんかお日柄もいいみたいで……と思っていたが意外となんとかなったし、この記事を書いてる今は1ヶ月の無理が祟って過労で伏しているので、実際はなんとかなっていないのかもしれないけれど、現場がない時にしか体調を崩すタイミングがないので何も問題はないのである。文章が怪しくなってきたので話を進めたい。

 コニファーフォレストに来るのはこれで2度目で、1度目は2021年5月30日に開催された「ARGONAVIS LIVE 2021 JUNCTION A-G」で訪れたもの。この2年余のGYROAXIAの活動はとてもめざましく濃密だったので、懐かしい気持ちよりもつい1年ほど前のことのように感じる気持ちの方が大きかった。自分の中に残っていた、富士山から降りてくる涼しい風が頬を撫でる感覚が少しずつ薄れてきたこのタイミングで、違う種類の興行とはいえまたGYROAXIAの音を聴くために同じ季節に同じ地を訪れていることに不思議な感覚を覚える。

 コニファーフォレストは何も変わっていなくて、高く広がる空も変わっていなくて。ただあの時と明確に違ったのは、客席の景色と、場数も経験も積み重ねてきたGYROAXIAの「ロックバンドとしての面差し」と「観客と一緒にライブを心から楽しむ一種の余裕」だったと思う。

 客席の景色については、1席空け→全席の座席配置に戻ったこと、声出しが解禁になったことなど情勢に対する措置が緩和されたことで生まれた変化があった。そしてJUNCTION A-Gは作品ファンに向けたライブであったが、ブシロックフェスはフェスティバルなので、参加するアーティストのファンがそれぞれ参加している。共演する女性アーティスト達ファンの男性陣が客席の9割を占めていたんじゃないかと思う景色。ひょっとすると、ほとんどの人がGYROAXIAの音楽を初めて聴く層だったのかもしれない。Animelo Summer Live の客席にいる時と似たような感覚だった。

 GYROAXIAの「ロックバンドとしての面差し」と「観客と一緒にライブを心から楽しむ一種の余裕」。アウェイともいえるステージにおいて、観客の声を受け止め応えるように楽しんで演奏する彼らの姿。バンドとして経験値を積み重ねてきたからこその「面構え」を感じたし、彼らの音楽に全身で呼応し、コールと歓声で噛み付くように対峙する客席の頼もしさが嬉しかった。男性の声や突き上げる拳のパワーはやっぱりすごい。

 GYROAXIAにとっては2019年のお披露目以来の声出しライブである。彼らを知る人がその場にほとんどいないなかスタートしたサプライズのお披露目から始まり、似た条件の中において、今度はバンドとして地力を蓄え、演りたい表現が体現可能になった彼らの音に応える「声」がパワー溢れるものであれたことが嬉しかった。最大出力のパワーで迎撃してくれた方々に本当に感謝を伝えたい。ペンライトで真っ赤に染まる客席をまた見たいと願っていたので、思いがけず見ることができて本当に嬉しかった。ブシロックフェスでなければ成立しなかった光景だったかもしれない。


終演後に喜びの声を届けてくれた小笠原仁さん。

 橋本真一さん(GYROAXIAリードギター担当。筆者のめっちゃ大好きな人)もFC限定配信でその喜びや得られたパワーを語ってくれた。即時的に伝わってその場で気持ちを交換できるのはやっぱりライブの醍醐味ですね。
興奮のセットリストは以下のとおり

NEW ERA
Freestyle
GETTING HIGH
DANCING PARANOIA
MANIFESTO
IGNITION
 Freestyleツアーでも使用されていたイントロから始まり、最高の「Greatest showの幕開け」を予感させるド頭のNEW ERAで会場から湧き上がるコール。この曲は冒頭でも書いたJUNCTION A-Gと密接な関係にある。コニファーフォレスト生まれの楽曲なのである。


 TAKEさんありがとうございます。
 そしてまさに今のGYROAXIAを言い表すような曲であるFreestyleでも、コールと歓声はうねりを上げて音の渦へ巻き込まれていく。次いでGETTING HIGH、DANCING PARANOIAと GYROAXIAの伝家の宝刀たるダンスチューンが続く。3年を経てGETTING HIGHで「HEY!」と初めて叫べた感動と衝動に浸る暇もなく、畳み掛けてくるDANCING PARANOIABPMにこちらの拍動も振り切れさせられてしまいそうだった。その上に横たわる真一さんのギソロとそば走る小笠原さんのスクリームが心地良い。小笠原さんのMCを挟み、ここで登場するのが親の声より聴いたこれぞGYROAXIAの原点・MANIFESTO。ここでも「HEY!」と叫べた。HEY!って叫べるものなんだね……。GYROAXIA式カルチャーショック。MANIFESTOをさまざな地で聴いているけれど「曲も生き物なんだな」と目が開けた気持ちだった。二次元のGYROAXIAも、リアルバンドのGYROAXIAも、生まれて演奏される楽曲も生きている。劇場版アルゴナビスAXIAの記事で「血が通ったGYROAXIA」の姿を見たと書いたけれど、今回のMANIFESTOにもそれを感じた。観客のパワーを喰らい、どこまでも昇っていくMANIFESTOの血肉を感じた。

 暮れなずむ空とともに流れ始めるIGNITIONのイントロダクション。今のGYROAXIAが歌い奏でるからこそ新しい意味が生まれる。2020年9月12日に開催された『GYROAXIA ONLINE LIVE -IGNITION-』で終演後のメンバーの皆さんが全員一致で抱いた悔しい想いとそこから研鑽を重ねた軌跡に想いを馳せながら、スモークと夕陽の光の中、袖に去り行くGYROAXIAを見送った。今日のライブが観客の心に炎を点火し、もっともっとGYROAXIAというバンドを好きになってくれる人が増えたらいい。わたしは真一さんがめちゃくちゃ好きだし、GYROAXIAもめちゃくちゃ好きだ。後日購入した配信映像を見てべしょべしょに泣きながら、GYROAXIAを好きになる人がもっともっと増えてほしいと思った。


 メディアミックスコンテンツの観点から今回印象的だった小笠原さんのアプローチ。筆者は新しいものを登場させるときの文脈作りや意味付けをしっかり考え込んでくれるところにアルゴナビスプロジェクトへの信頼を感じているので、リアルバンドのフロントマンである小笠原さんが常にそれを意識されてることがうれしい。

 ワンマンツアーを経てどっしりとしたバンド力を備えたGYROAXIAだからこそ、今回のブシロックにおいて「ロックバンド」として正攻法に音で戦い、MCでも新しい試みが素敵に響いたんじゃないかと勝手に思う。キャラクターを背負うコンテンツだからこそ、メンバーのみんながあんなに破顔しながら演奏する姿を見れることは本当にまれなことで。これまで積み重ねてきた悔しい想いも嬉しい想いも、経験も、全ての出来事がきっと繋がっている。ここまで彼らと一緒に走ってきたという想いを勝手に持っているため、心から楽しんで演奏する真一さんとGYROAXIAメンバーのみんなを見れたことが嬉しくて、それだけで来て良かったと思える日だった。きっと今後もGYROAXIAの快進撃は続いていく。彼らはそんな確信を常に抱かせてくれるバンドなのだ。

 ありがとうGYROAXIA。

 これからも、よろしくどうぞ!
 (今夏のツアーも楽しみだね!)

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 2年連続で富士山を見ることを忘れたのでお土産でカバーしようとする筆者。富士急ハイランドに行って富士山を見ずに帰ってくる人なんているのでしょうか……(少なくともここに1人)。配信で富士山が映ってて良かった