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書ければ良いので

舞台『パタリロ!』~ファントム~

舞台『パタリロ!』~ファントム~(2022年9月1日-11日 天王洲 銀河劇場、2022年9月17日-19日 サンケイホールブリーゼ)

 貴方は舞台パタリロ!シリーズをご存知だろうか。

 別に現時点でシリーズをご存知でなくても問題ない。何故ならこの文章を書いている2022年9月6日、舞台パタリロ!は銀河劇場で絶賛公演中であるため、チケットを入手すれば観劇できるからである。ちなみに4年ぶりに大阪公演もあるため実質見放題だ。やったー。

 本稿で敢えて多く語らないが、ちょっと色々あって、パタリロ役の加藤諒さんを残して初演カンパニーは一旦解散している。私が大好きな別の舞台シリーズにも累が及んだり、劇場版の公開がひっそりと延期されたり、色々あった。公演曲が収録されたプレイボタン(公演グッズ)を再生してはうずくまって泣く夜もあった。「もう舞台パタリロ!は二度と上演されないかもしれない」と1年くらいは何かにつけて泣き暮らしていた気がする。友人の中で唯一観劇していた子と2人でよく泣いていた。可哀想である。

 そんな背景もあって、本シリーズ2作目のスターダスト計画(2018年上演)から現地で観劇をしており、また、4歳から魔夜峰央作品のファンでもある筆者は現在も舞台パタリロ!シリーズが続く事実そのものを奇跡と感じ、作品に関わる方全員に深く感謝し、何よりもシリーズとカンパニーに重苦しい愛を捧げている。劇場で号泣している人間がいたらだいたい筆者である。今後もファントム公演ならびに舞台パタリロ!シリーズが無事に続くことを祈り、この文章を書く。

Q.そもそもパタリロ!って?

A.(とても有名で歴史ある作品のため説明すること自体が野暮かもしれないが、)来年連載45周年を迎える少女漫画である。原作者は魔夜峰央ことミーちゃん先生です。なお、この「こと表記」の順序は意図的なものである。

Q.舞台パタリロ!シリーズの魅力って?

A.「笑い」に特化した作品構成である。昭和から続く原作の雰囲気をそのままに、令和の世であることを忘れるくらいにコンプライアンスフリーダムにやっている。また笑いだけでなく繊細なお芝居も見ることができる。切なくほろ苦い余韻が残るのだ。ちなみに原作の履修はしなくても問題ない。(原作もぜひ読んでほしいが)知らなくても世界観に引っ張り込まれるし笑える。これは面白い2.5次元の演劇において必要不可欠な要素ではないだろうか。

 そもそも演出の小林顕作さんは積極的に打ち壊しにかかることで作品の魅力を表現しようとする人である。その作り方が「何でもあり」な原作の作風とこれ以上ないほどマッチして相乗効果を生み出している。また、普段から舞台を観劇する人は「小林顕作演出」で想像する雰囲気があると思う。私は顕作さんが舞台で使うアナログな小道具が大好きだ。

 何も考えずに笑いたい人は是非観に来てほしい。

Q.今作のファントム公演の見どころは?

A.今回新たに加わった実力派キャスト陣が本編に巻き起こす笑いの旋風、そしてシリーズ初の試みである公演後のレビューショーである。また、初演のキャスト陣も含めて毎日日替わりゲストが登壇する。原作45周年記念公演と銘打たれた本作、本気の祭りなのである。

 それにしても舞台パタリロ!でうちわやペンライトを振れるなんて……。生きている間に人生で一度は来ておいた方がいい。なお、今回の公演では公演グッズとしてリングライトが販売されている。とても可愛いのでぜひ複数買って付けてみよう。光る物体を振っていると人間は無条件で楽しくなるものである。

 また、レビューショーの選曲についてはファンに向けて事前に投票が募られた。もちろん筆者もしつこく文章をしたためて送った。偶然かもしれないが、自分の投票内容と同じものが採用されており、希望が叶ってうれしかった。

Q.そうは言っても作品もキャストさんもよく知らないし……

A.そんな貴方に朗報である。

 なんと明日9/7(水)にタマネギ部隊キャストによるLINELIVEが開催される。今この文章を読んでいる人はなんと幸運な人だろうか。きっと今後の人生も薔薇色に包まれている素晴らしい人に違いない。私は貴方と出会えて幸せである。

 LINELIVEの出演は原嶋元久さん、佐川大樹さん、田村升吾さん、武本悠佑さんだ。ちなみに開催時間は17:15~17:45という社会人には視聴が厳しい時間帯であるが、さして大きな問題ではない。告知ツイートには「セクシーアフタヌーンを皆さまお楽しみに🧅」と書かれてあった。つまり、これはまずセクシーアフタヌーンが世にあり、次に我々が存在するといったところだろう。セクシーは待ってくれないのだ。

 ところでセクシーアフタヌーンって何だろう……。

 是非その目で確かめてみてほしい。 https://linliv.ee/qzroo0b/co/ot/sh/pl

 ※本稿を書いている間に質問コーナーの開催が発表された。事前に質問を募集しているようだ。詳しくは舞台公式アカウント(@patalliro_stage)をチェックしよう。

Q.見れないよ。

A.筆者もである。アーカイブが残ることを祈ろう。

(9/7追記:アーカイブが残ったよ!やったー!大千秋楽の9/19まで残るそうです。ありがとう……。)

 しかし、ここまで読んでくれた優しい貴方は多少興味を持ち始めてくれたのではないだろうか。ここでおすすめのゲネプロ動画を載せたい。パタリロは楽曲がとても良いのである。


 クックロビン音頭の映像を冒頭に挿入してくれる愛が嬉しい。他作品においても、エンタステージさんのゲネプロ動画の編集に愛を感じている。
 動画の1分41秒あたりを見てほしい。

 お気づきだろうか。

 踊り方がゲネプロの熱量ではない半裸の人が混じっている。

 彼は原嶋元久さんという役者さんだ。なお、2分58秒あたりで怒りながら脱いでいる人物も原嶋さんである。原嶋さんはなぜか舞台パタリロ!シリーズにおいて一人で怒りながら脱ぎ始める。前作の霧のロンドンエアポート公演では「やってやんよ!」と憤りながら海パン姿になっていたし、水着には原嶋さんのフルネームが書かれていた(学生時代に使用していたものを自宅から持参されたそうです)。

 突然だが筆者は原嶋元久さんに非常に感謝している。彼は前作の霧のロンドンエアポート公演から参加されているキャストさんだ。

 筆者には原嶋さんの出演舞台やイベントによく出没する友人がおり、折に触れて話を聞いていた。カンパニーが刷新され、観に行くかどうかとても不安なまま迷っていた筆者を劇場に向かわせたのが原嶋さんの存在だったのである。原嶋さんは良い役者さんだ。芝居に体当たりであるし、役作りに真摯である。そしてそれを上回るエネルギーで様子がおかしかった(褒めています)。

 また、前回の霧のロンドンエアポート公演では舞台の経験年数がまだ浅いキャストさんも多く出演していた。原嶋さんはそんな彼らをタマネギ部隊のリーダー的立ち位置で引っ張り、芝居を開花させる手助けをしていた。この作品では殻を破った者勝ちだ。それを自ら率先して先導したのが原嶋さんだったと思う。

 原嶋さんは恐らく前回公演で最も兼役が多かった。数ある役の中のひとつ、恐らく数分も出番がない、名前のついていないパイロット役においても職業背景を調べ、その役を後輩に渡す時も本気でかかってこいという姿勢を見せていた。そして後輩たちが見せる日替わりに心底楽しそうに笑っていた。原嶋さんは新キャストにも関わらず、まるで現場のプレイングマネージャーのように作品に向き合ってくれた。本当に感謝している。これからもずっと舞台パタリロ!シリーズに出てほしい。

(9/7追記:原嶋さんは今作に向けて2ヶ月前から身体作りを始め、体重は変えずに体脂肪率を13%→8.1%に下げたそうです。脱ぎに対するストイックさがあっぱれです……ありがとう……でもなんで脱ぐんだろう……。)

・・・

 「続ける」ことにはしばしば困難さを伴う。作品然り、舞台然り、人生然り。長く続けばその過程で様々なことが起こるのは何においてもきっと変わらない。それでも、それでも、愛と続ける意志があればなんとかなるんじゃないか。だって、舞台パタリロ!シリーズは帰ってきてくれたんだもの!

 そんな風に思う。

 本作を何度見ても「滑って転んでもがいて泳いでここまで来た」という歌詞にはきっと涙が抑えられないだろう。こんなに幸せな涙に溺れることができるようになるなんて思ってもみなかった。この幸せをずっと甘受したい、もっと沢山の人に舞台パタリロ!シリーズを知ってほしいという気持ちだけで本稿を書いた。もしここまで読んでくれた人がいたら、それだけで報われる思いである。

 本作品の背骨である加藤諒さん(筆者は普段、親しみを込めてりょうくんと呼んでいる)、小林顕作さん、池田テツヒロさん、そして何よりも原作者の魔夜峰央先生にこれからも最大限の愛と感謝をお送りしたい。書き切れていない感謝が山ほどある。りょうくんが背負ってきたものに対する尊敬と感謝の念は絶えることがない。りょうくんのパタリロは原作のデフォルメ描写のように4本指に見える時がある。そんなはずないのに。見た目も中身もりょうくん以上にパタリロを演じられる人はきっといない。

 今回、魔夜先生がパンフレットに寄せた「逃す」という考え方に倣い、強張るような愛と意志でガチガチにならず、良いように「逃して」、今続けていることをこれからも続けられるよう生きていきたいと思った。舞台パタリロ!シリーズも、国際交流都市のように様々な人がカンパニーに混じり合い、行き交い、今後もゆるく連綿と続いてくれたらいいなあ。

 舞台パタリロ!シリーズを愛させてほしい。筆者が望むのは今までもこれからも、ただそれだけだ。

 

 パタリロ!はずっとフォーエバー!

 

公演公式サイト
https://www.nelke.co.jp/stage/patalliro2022/

ローチケ(東京公演)
https://l-tike.com/patalliro2022/

銀河劇場チケットセンター(東京公演)
https://www.gingeki.jp

ローチケ(大阪公演)
https://l-tike.com/play/mevent/?mid=640311

 なお、劇場にて座席指定可能のリピーターチケットも販売されている。当日券や当日引換券も販売される公演もあるので、ぜひとも気軽に足を運んでみてほしい。

 

2022.9.6記